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執筆者の写真Philip/K/Kom

<閲覧注意>芸術論談義④ ~現代でアーティストになるには?~

更新日:2022年1月12日

みなさまメリークリスマス。

と言っても、クリスマスとは24日の日の出から25日の日没までなので、本来この時間はもうクリスマスは終わってしまっているという事ですが、まあ細かい事はいいでしょう。


街に出なくなってからは、人々の賑わいやイルミネーションを観る機会が減りましたが(元々そんなにクリスマスを意識していたわけではありませんが)今年は例のウィルスの影響で東京の人ではどうなんでしょうね?


少しづつ営業自粛が解除されて、会社によっては小集団で忘年会をするところもあるそうです。まあ人間というのは基本的にコミュニケーションの生物ですから、やっぱり仕事もリモートで食事も家だけというのはけっこう辛いというのがあるんでしょうね。


ただ、20代の若い方たちは逆に飲み会が無い事や、リモートで出来る事をとてもエンジョイしているそうで追い風になっているみたいです。

まあこれは私の所感ですが、日本の若い層はどんどん無欲主義になっている感じがしますね。”ストイック”という言葉を思い浮かべる人もいると思いますが、それとは厳密にはちょっと違います。ストア派=ストイックとは、自分の中の欲を抑え、節制する事でより人間的な、より良い生き方が出来ると思った人達です。対して現代の若い方たちは、そもそも欲自体が薄い、無くなってきているのかもしれません。

なんというか無欲の境地に達すれば悟りが開けるかもしれないですね。

そう考えると、人類という生物集団がひとつ違う次元にシフトし始めている兆候なのかもしれません。それが幸福につながるかどうかは分かりませんが。


そんなところで枕はここまでとして、本題に移ろうかと思います。


その前にひとつ注意。

もしこの記事を読む前に、アーティストになる方法の具体的な話を期待されていた方はすいません。

どこの大学や専門学校は就職率が高いとか、どこそこの団体はコネに強いとか、一番手っ取り早いアーティストの成り方とか、そういった小手先の情報は僕が書かなくてもネットに転がっていると思うので、それを読みたい方は是非そちらを行かれた方が幸せになれると思います。



今月の芸術談義第四回テーマは、「現代でアーティストになるには?」です。

この漠然としたテーマをどう捌くかがとても難しいのです。


まずそもそも「アーティスト」の前提定義を定めなくてはいけません。

アーティスト一言で言っても、歌手から画家、映像クリエイターから始まりファッション、建築、工業デザイナーと、ぶっちゃけるとほぼどんな職種でも芸術的要素は絡んできます。

ということは、ビジネスマンは全員アーティストだ!


めでたしめでたし。


と言う終わり方でも良いのですが、まだ気力が残っているのでもう少し深掘りしていこうと思います。

先ほども述べたように、仕事というのはある程度芸術的要素が含まれることが多々あります。

しかし所謂「アーティスト」というのは、芸術的活動を1次創出している人に今回は限定しようと思います。

何を言っているかと言うと、仕事の本質がそもそも芸術的な活動を指していて、かつそれが継続性を持っているという事です。

例えば、画家。画家は絵と言う芸術作品を製作して、それを顧客に販売してお金を得る。

別に最後のお金を儲けるかどうかは重要ではありません。

重要なのは、創作物がそもそも”芸術として定義されているもの”と言う事です。(芸術の定義は第一回を参照ください)

つまりは、そのアーティストが作った絵を転売する事(例えば画廊など)は、芸術的活動をしていますが、2次創出になるという具合です。

要は、芸術活動を最も上流(創出される部分)で活動している人の話をしようと思います。


というわけで、テーマの範囲が決まりました。

芸術活動の上流でもたくさんの活動方法や範囲、団体がありますが、そこを1から全部羅列するのは面倒くさいので、皆様が想像する「アーティスト」と思ってこの後の話を聴いてもらえればと思います。


では、現代でアーティストになるにはどうしたらいいでしょうか?

実は、現代でも古代でもアーティストのなり方の本質はそんなに変わりません。

歌手になりたいなら歌を練習して、どこかの団体に所属する。その中から際立った人はより多くの人の目に留まる表舞台に輩出されていく。俳優も同じです。

画家でも絵の勉強をして、どこかの団体もしくは個人でより多くの人に知ってもらう活動をしていき、そのうち絵が売れる。そして”良い”と思われた絵と画家は、有名になって今度はお客さんから描いて欲しいと言われるようになる。


どんな種類やアーティストもいずれにしろ下記の様な工程を踏みます。

1.芸術についての勉強・修行(学校など)

2.特定の団体、個人に所属する(アーティスト集団や師弟)

3.ひたすら作品を作る

4.世の中にPRする

5.運が良ければ売れる


古代と違って、現代ではテクノロジーという強い武器があります。

それは、インターネットです。

これの出現の前後では、ビジネスという概念そのものが違った意味を持つほどです。

アーティストもネットを使った全世界的なPRも可能ですし、SNSを活用して興味がある人、つまりは将来の見込み客を絞り込みでPRをしていく事も出来る時代です。

古代や中世ではそういうのはありませんから、活動する地域で有名なアーティストの弟子にしてもらって、頑張っていくうちにコネをもらったり、パトロンが出来たりと、今よりもよりコミュニケーションが重要な能力のひとつでした。


まあ現代は多様化の時代ですから、やり方は人それぞれで、こうじゃなくてはアーティストになれないというわけでもありません。

僕の様に独学で勉強しているアウトサイダーもいますし、しっかり芸術系学校に行って、それに関連するお仕事をされている方も多いです。

だから現代ではそういった意味で選択肢も道具も豊富になったと言えます。


では、アーティストなんて誰でもなれるのか?と感じるかと思いますが、それは大きな間違いです。

アーティストというのは”職業”では無くて”生き方”の事なんですね。

だから別に芸術活動が直接営利に結びついていなくても良いわけです。描いた絵や作った曲を全て無償で誰かにあげてしまって、もらった人はとても喜ぶ。これもアーティストの仕事です。

どうしても日本と言う国は、アメリカに敗戦後から合理主義を押し付けられて、自分たちが行動する事、つまり”仕事”には対価があって当然という価値観があります。

そして現代になるほどそういったコストパフォーマンスの良い仕事=生き方を選ぶ人が多くなってきています。正直コスパで言うならサラリーマンが一番コスパが良いです(これは悪口ではなく理論上の話)。

なぜなら、サラリーマンというのは仕事した時間に対して一定の対価が必ず支払われる事を前提としているからです。いやクソブラック企業とかは例外だよ。

つまりは、時間×係数で自分が稼げる収入が分かり、ひいては自分が一生で稼ぐことが出来る金額もわかると。じゃあ今の会社より係数が高い(=コスパの良い)会社が良いだろうという事で、就活戦争が起きているわけです。


対して、アーティストというのは、活動した時間がイコールで対価に繋がらない事の方が多いです。というより最初の頃は収支マイナスが往々にしてあるパターンでしょう。

最初から売れるアーティストがいるとすれば、それは神に選ばれた天才でしょう。もしくは、後援者がよっぽどコネや支援力が強いかのどちらかです。


99.999%の人は、天才ではありません。


よくアーティストの方が相手に言われる言葉として多いのが、

「絵を描いてるんですか?才能ありますね!」

絵の部分は歌でも曲でもなんでもいいです。

この才能という部分ですが、我々にそんなものはありません。

才能があるからアーティストになるのではなく、アーティストとして生き方を選択して、結果日の目を見れた人が後付けで「才能がある」と言われているだけなんです。

まあ”勝てば官軍負ければ賊軍”なんて言葉がありますが、そのとおりだと思います。


才能がアーティストを創るのではなく、アーティストが才能を創るんです。


それは茨の道でもあり、自分との戦いの連続です。

365日活動の事を考え、トライ&エラーして、反省して次に活かす。

この努力こそがアーティストのガソリンなんです。

そして残念ながらアーティストを目指す方の多くの方は、日の目を見る前に諦めてしまっています。

なぜ諦めるかと言うのも色々理由がありますが、これは先ほど書いた「アーティストとは職業ではない」という部分に大きな要因があると思います。

アーティストを選んだからには有名になりたい、金持ちになりたい、ちやほやされたいなど大なり小なり目標を持つものです。

しかし、その目標こそが間違っているんです。アーティストとはそれら欲求とは真逆の活動をしなくてはいけないからです。

そういった欲を満たしたいのなら、是非ビジネスで起業して成功させた方が圧倒的に楽です。

アーティストとは誰かに喜んでほしい、楽しんでほしい、少しでも世の中にインパクトを与えたい。そういった外側に向けた意志の集合体なのです。

そしてそれは、たとえ無償でも良い。自分は貧乏でも自分の作品で一人でも心が豊かになればいい。というもうギブ&ギブのちょっと聖人君子に近い様な考え方でなければ続けることは難しいでしょう。


「いや逆にその考え方の方が続かなくない?」と思う人もいるかと思います。

いや違うんです。芸術活動に自分の欲を絡ませたら絶対に長続きはしないんです。

なぜなら、ほとんどの芸術活動は欲を満たす事なんて出来ないからです。

欲の満足の注力してしまうと、「全然有名になれない」「作品が高く売れない」事が地獄のように連鎖してしまい、いつかは続ける気力が果ててしまうんです。


アーティストというのは、自分の内なる声を聴き、それを現実に表現し、世の中に発信する。外野の声なんて聴かなくてもいいんです。自分が正しいという道を信じ、トボトボでもいいから前進し続ける。そんなバカになりきらなくてはいけないんです。


ではアーティストに必要な要素とは何か?

それは先ほどのギブ&ギブの精神も大切ですが、最重要な事がひとつだけあります。

簡単な事です。

それは、”その活動を自分の宿命に出来るか?”という問いに”YES"と答えられる”覚悟”だけです。

つまり、難しい理屈抜きに、自分はそれをやらなくてはいけないのか?と言う事です。

この自分で自分の自由を破壊する義務=覚悟こそがアーティストになれる素質です。


まあもちろん強運の人は、そんな事も考えずに売れる人も一定数いるのも事実ですが。

でもそういう人達だって、ぼんやりと意識の根底では自分の活動を”やるべき事”と定着していると思います。

”やる事”ではないですよ。”やるべき事”。ここを間違えてはいけない。


それでは、今回のテーマのアンサーに行こうと思います。

Q:現代でアーティストになるにはどうしたらいいか?

A:それを”宿命”としてやり続ける”覚悟”さえあれば誰でもなれる。


そりゃもちろんアーティストだって食っていかなくてはいけないわけですから、お金は絶対に必要です。その生活費をどのようにして調達するのか?それを最初から活動に結びつけては長続きしないというお話しでした。

現代では、クラウドファンディングなどの現代のパトロンとも呼べる便利なものがありますから、いかに頭を使って、工夫して、活動費を工面するのかというのもアーティストの大切な仕事の一部です。

でも「自分はアーティストだ!」と信念を貫いて生きていけば、たとえ有名にならなくてもきっと有意義な人生を送れると僕は信じています。


最後に加えておきますと、芸術活動が利益に結びつく事が”悪”だと言っているわけではありません。儲かろうが儲からなかろうが、どっちでもいいんです。

儲かっているからアーティスト、儲かっていないからアーティストじゃない。という固定観念から破壊しないと日本に芸術が浸透していかないと思っているということです。



そんな感じで、今回のお話しは終わりたいと思います。


新年一発目の第五回のテーマですが、「現代アートが高額になるメカニズム」について語ろうと思います。


今回も長々とお読みいただき大変感謝しています。

それではまたお会いする日まで。


Philip/Kindred/Kom


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